鳥飼否宇 『昆虫探偵 シロコパK氏の華麗なる推理』

昆虫探偵 (光文社文庫)

 これまでの有名な本格ミステリのオマージュ・パロディ的な側面と共に、物凄く意表をついたミステリだなという感想。
 もともと人間だった主人公葉古小吉が、カフカの変身よろしくある日突然ゴキブリになってしまい、昆虫界で探偵クマンバチのシロコパKとともに事件に当たっていく、という話なのですが。
 何と言っても人間世界での理を推理に持ち込もうとする主人公に対して、昆虫は怨恨だの私利私欲だのでそんなことをしないと、皮肉な感じで読み手の思考も断ち切ってくれるような展開が面白かったです。ぃゃ、確かにその通りと、虫の世界ならではの事件の真相に納得させられて、イロモノではありますがしっかりと筋は通っています。少々専門的、というよりもマニアックな知識に解決が頼っている面も無きにしも非ずではありますが、それでもしっかりミステリとして気軽に楽しめる、良い意味で「変な小説」でした。
 最終章(と見せかけて実は兼後書き?)で明らかにされる構造も楽しめました。