10篇の短編が収録された短編集。
どれも短いながらも、端正な文章で綴られた毒というか畸形の美しさのようなものを覗かせる、非常に存在感のある小説でした。
肉体的にしろ、そして精神的にしろ、どこか病んでいる部分を持っている登場人物が、その病根ゆえに美しく描かれているような部分が上手いですね。
ただし、どれも短編としては完結しているものの、決して後味の良いものではないので、好き嫌いは分かれるかも知れません。ホラーやダークな雰囲気が好き、それも直裁的な表現ではないからこそじわじわと感じる「暗さ」が好きだという向きにはオススメかもしれません。
実際、結構エグイ描写があったりもするのですが、著者の文章の語り口の柔らかさやその表現力で、「怖い」という感じはあまりしません。ですが、ふっと感じる異質さなど、日常の中に紛れ込んだ異端を感じさせる作品集であるなと思いました。