ダイアナ・パーマー 『淡い輝きにゆれて』

淡い輝きにゆれて
 白人に襲われて瀕死だったスー族の少年のレイヴンは、白人であるにも関わらず自分たちを差別せずに命を助けてくれた医者とその娘のテスのお陰で、今ではマットという新しい名前でシカゴの私立探偵として成功しています。
 そして12年が過ぎ、大人の女性になったテスは父の死を機に、マットのいるシカゴに身を寄せ、そこで看護婦として働きながら女性の社会的な地位の向上のための婦人運動に熱心に参加します。
 ところが、あるデモに参加したテスが、明らかに故意に傷を負わされ、さらには一緒に婦人運動をする友人のナンが暴力的な夫との間で揉め、家を飛び出したナンの夫が殺されるという事件が起きてしまいます。
 殺人容疑を掛けられた友人を助けるために、マットとテスは奔走しますが、同時に人種の違いに怯まずに自分に踏み込んでくるテスに対し、マットは徐々に拒絶を示すのが難しくなり――。

 19世紀の終わりから20世紀初頭のアメリカを舞台にした、いわゆるヒストリカル
 この時代はネイティブアメリカンの地位は勿論、女性の地位も低く、その意味では慣習や偏見にとらわれないテスのキャラクターは、婦人運動をしているという設定に無理なく沿うもので、比較的好感の持てるものでした。
 もっとも一方でマット(レイヴン)の煮え切らなさや、そうかと思えば終盤で一転した態度を見せるあたりの唐突さというものが、少しばかりアンバランスに思える部分はありました。
 殺人事件の真犯人に関しては、比較的分かりやすい人間関係から初期の段階でほとんど読めてしまいますが、シンプルな事件であるのにも関わらず、(非常に分かりやすいものではありますが)幾つかの不運や若干の攪乱要素を配置するという構図は悪くは無いように思います。