リンダ・ハワード 『夜を抱きしめて』

夜を抱きしめて
 夫を亡くして3年、ケイトは亡き夫の忘れ形見の双子の息子とともに、アリゾナの田舎で、ようやく軌道に乗りかけたB&Bの経営をしています。ですがある日、B&Bに宿泊した客の一人が、荷物を置いたまま窓から失踪してから、平穏だった彼女の生活は一変します。失踪した客を追って来たらしい男たちに、突然銃を突きつけられたケイトを助けたのは、日頃は内気に思えた便利屋のカルでした。

 まず、宿泊客の謎の失踪の真相に関しては、あっさり過ぎるほどあっさりと明かされてしまう辺りが勿体ない気がします。そこまで話を広げてしまうと収拾がつかなくなる可能性も無きにしも非ずですが、襲撃者である男達のサイドから描かれた部分で、さほど重要でもない箇所があるので、作り方によっては上手くバランスも取れた気はします。
 加えて、視点がいくつかに切り替わることも、結果的には作品を散漫なものにしてしまっています。
 また、突然村が封鎖されて銃撃を受ける場面の緊迫感はあるものの、この敵の作戦もあまりにもお粗末で、途中から拍子抜けさせられてしまいます。さらには、ケイトとカルの決死行も、結局の所その意味合いがあまりにも弱い点も気になりますし、結末部分はかなり詰め込んで終わらせたような雑な印象も残ります。
 ある種の極限状況の創出と、その中での緊迫感に満ちたサバイバルは読み応えがありましたし、未消化で付け加え的になってしまってはいましたが、ラストで仄めかされた、敵方の男が知るニュースの使い方も面白かっただけに、様々な要素が中途半端であったことが残念。