マーゴット・ダルトン 『見つめる瞳』

見つめる瞳 (〔MIRA文庫〕―ジャッキー・カミンスキー (MD01-03))
 女刑事のジャッキー・カミンスキーは、老女の家に起こった家宅侵入と、その周囲に送られたペンタグラムの描かれた脅迫状の事件を捜査します。オカルト趣味にのめりこんでいるどこか薄気味悪い少女、離婚した妻と夫など、それぞれに事情がありげな関係者を調べるジャッキーたちですが、そんな中で脅迫状を受け取った人物の一人が、脅迫状に書かれていた通りの惨たらしい方法で殺害されてしまいます。

 悪魔崇拝を思わせるアイテムをちりばめ、異常な方法での犯行、それぞれに知られたくない秘密を持ち癖のある登場人物たちなど、サスペンスとしては道具立ても中身の構成もまずまず良く出来ていると言える1作。
 ですがそれだけに、第一の殺人から第二の殺人までの間が若干盛り上がりに欠けて冗長に思えましたし、そこそこインパクトのある事件であるはずなのに、ストーリーの比重が登場人物の描写に偏っている気はします。
 また、犯人との対決を控えて、ジャッキーの家に犯人が残した遺留品から犯人の特定が出来たはずなのに、その捜査が後回しになっていたりするあたりは、伏線が無駄になっている感じも受けてしまいます。
 ただこの種の作品にありがちなように、犯人特定への道筋が、成り行き任せだったり偶然に頼りすぎたりということはなく、記述に多少不足感のある部分もありますが、それなりにきちんとした伏線の上にある辺りは評価を出来るところだと言えるでしょう。