石崎幸二 『≠の殺人』

≠の殺人 (講談社ノベルス)
 ヒラモリ電器の跡取り息子で石崎と同級生だった英一とその妻の招待で、女子校でミステリィ研の顧問をする石崎幸二は、人騒がせな女子高生たちに引き連れられて沖縄にある孤島、水波照島の保養所に訪れます。ですが、有名人らゲストの集う断崖の館のその保養所で、左眼、左手首、足の指などが切断され、さらに左胸から腹にかけて激しく損壊された遺体でゲストの一人が発見されます。

 女子高生のミリアとユリと、彼女らに駄目の烙印を押されまくる顧問の石崎のシリーズ作品。本作でも、何やらいわくありげな招待、双子、猟奇的な殺人といった道具立てが、孤島で他からは遮断されたクローズドサークルという舞台で物語は展開されます。
 主に女子高生のミリアとユリの、どこか脱力感の伴うダラダラとしていながらも軽妙な会話がかなりのボリュームを占めていますが、それこそがシリーズの持ち味でもあるという部分もありますので、ある程度読者を選んでしまう部分があるとはいえ、一概にその部分をスリム化すれば良いとも言えないのは難しいところ。事件そのものに関しては、オーソドックスといえるもので、比較的地味ながらもセオリーに沿って丁寧かつ論理的な組み立てを見ることが出来ます。
 キャラクターのアクの強さだけが残って、事件そのものは今ひとつインパクトが弱いという面も否定できませんが、割とオーソドックスな素材を扱いながらも、現代的なガジェットも取り入れてキッチリと料理する方向性は好ましい作風と言えるでしょう。