初野晴 『初恋ソムリエ』

初恋ソムリエ (角川文庫)

 事件を解決するにつれてハルチカ吹奏楽部に関わる登場人物たちも増え、漠然とした目標だった「普門館」への具体的な道筋が示され始めた第2作。
 ライトな掛け合いをする主人公たちのキャラクターに救われているとはいえ、各編で暴かれるものには苦さを含みます。この落差が本作の懐の深さであるのかもしれません。殊に、『周波数は77.4MHz』や、『アスモデウスの視線』では、いかに事の真相を明確に見抜く頭脳をハルタが持っていようとも、それだけでは一介の高校生に過ぎない彼らの力では如何ともし難い現実までもが描かれます。
 また、『周波数は77.4MHz』で吹奏楽部の顧問である草壁先生が、部活の最終目標である普門館への出場以上に、その先にある教え子たちの人生を見据えた発言は、高校生である彼らの「部活」という時間には終わりがあることを示唆しています。限られた時間の中で、一つ一つステップアップしていったり、あるいは彼らの力だけではどうしようもない苦い現実を見ることで成長する主人公らの姿が、本作でも清々しく描かれます。「高校生活」のタイムリミットへ向け、シリーズが今後どう動いていくのかも、益々目が離せなくなりそうです。