黒田研二 『カンニング少女』

カンニング少女 (文春文庫)

 高校3年生の椿井杜夫は、ひょんなことから同じクラスの天童玲美が難関大学受験を狙っていることを知ります。そこまで成績が良いわけではない玲美が突然志望校の大幅ランクアップを狙った理由には、彼女の姉で杜夫の部活の先輩でもあった天童芙美子の死の謎があることを知り、成績トップの並木愛香、機械オタクの平賀隼人らとともに、玲美の受験に協力することになります。彼女の志望する大学を受験するためには、いけ好かない担任の安部を納得させる成績を取る必要があり、杜夫らは玲美のために究極のカンニング法を考案します。

 姉の死の真相を探る為、難関の大学受験に挑む少女と、彼女の思いを遂げさせる為にカンニングという手法をサポートする仲間たちの物語。
 物語は、カンニングによって大学受験の突破を図る玲美と彼女をサポートする杜夫らと、大学でカンニングをする学生を徹底的に排除しようとする動きとが図らずも同時進行することになり、それらが結末部に向かって玲身の姉の死の真相に結集する構成は秀逸と言えるでしょう。
 肝心の姉の死の真相に関してはやや拍子抜けですが、ひとつひとつ段階を踏んで、次々に困難を克服していく物語の展開は、高いエンターテインメント性に満ちています。
 さらに、そこにはある種のコン・ゲーム的な面白さはありますが、同時に実際にカンニングを行うことに対する玲美の罪悪感と、それに対して与えられる仲間からの答え、さらには将来を見据えて玲美自身が抱く決意の過程には、青春物としての成長物語も内包して描かれます。
 読後感も良く、爽やかな痛快さをもたらしてくれる一作。