有川浩 『ほっと、ゆず』

ほっと文庫 ゆず、香る
 入浴剤付きの32p小冊子。
 父の田舎で、昔は当たり前のように手にしていたゆずの香りに、遠ざかった故郷への思いと、学生時代からの「友達」である彼への複雑な想いを乗せて語る主人公の心情が綴られる掌編。

 32pという短い中に、主人公の女性の郷愁や、言うに言えない秘かな恋心などが見事に盛り込まれ、さらには本作とコラボレーションしている「馬路村のゆず」の入浴剤との相乗効果が実に素晴らしい一作と言えるでしょう。
 入浴剤という商品とのコラボという企画を、最大限に生かした著者の上手さをこの短い作品に見て取ることが出来ます。