理沙 『華鬼 終焉とはじまりの乙女』

華鬼 終焉とはじまりの乙女 (レガロシリーズ)
 神無と華鬼との物語から十数年が経ち、旅に出ていた"三翼"の光晴は、温泉地で華と神楽という双子と、かつては華鬼と戦った響に似た容貌を持つ京也に遭遇します。光晴が良く知った者たちの子供であった彼らは、鬼の花嫁を殺害して回る"凝り鬼"と称する一派を狩るための、"闇鬼"となって過酷な戦いの中に身を置いていました。

 シリーズ番外編と銘打ちつつ、実質的には次世代に主役を移したシリーズ第二期の始まりといったところ。
 本編では大団円を迎えたものの、鬼社会における歪のようなものがそのままとされていたことを伏線の一つとし、さらには鬼が本来迎えるべき滅びへと向かうためという理念のもと、「鬼の花嫁」を殺そうとする"凝り鬼"との戦いというフレームを持ってきたことで、物語そのものはむしろ本編よりも綺麗に纏まっている印象があります。その理由には、世界観が本編よりも固まっていることと、物語の中心となる人物が固定されているために、本編では散漫な印象があった部分が綺麗に解消されているということもあるかもしれません。
 本編の物語や設定を踏まえていなければ通じにくい部分はあるにせよ、作品内の章ごとで時間軸がかなり前後に飛ぶにしては、実に分かり易く、かつこの時間軸の配置が効果的に物語を演出していると言えるでしょう。
 まだまだこの先の展開がどうなるのかは読めない部分も大きいですが、それだけに今後に期待したいところ。
 また、巻頭には響と桃子という、本編での重要キャラクターのその後の物語も収録されています。