梨沙 『華鬼 1〜4』

華鬼 (レガロシリーズ)華鬼2 (レガロシリーズ)華鬼3 (レガロシリーズ)華鬼4 (レガロシリーズ)
 「鬼の花嫁」の刻印を受けながらも、生まれてから16年、本来であれば彼女を守るための庇護を受けずにいたために悲惨な育ち方をした神無は、最も強い鬼である「鬼頭」の名を継いだ華鬼の花嫁として鬼ヶ里の高校へと連れて来られます。ですが、華鬼が彼女に対して殺意を持っていることを露わにしたことで、"三翼"の鬼たちそれぞれが神無に求愛をし庇護を与えることにより、彼女を守ろうとします。

 リーダビリティに満ち、キャラクター小説としての魅力に溢れた、いわゆるネット小説の書籍化作品。ネットという媒体で生まれて展開された物語であるがゆえに、おそらくはリアルタイムでの読者の反応なども作品には反映されるでしょうし、読者のトレンドとでも言うべきものを非常に敏感に取り込んだのではないかと推測されます。それは、女性読者の嗜好のツボとでも言うべきものに沿ったキャラクターであり、恋愛シュミレーションゲーム的なシチュエーションにも現れていると言えるでしょう。
 ただし、小説作品として読んだ場合には、やや物語の起点となるはずの華鬼の殺意や行動原理には、必ずしも十分な説得力を持っていない面も否定できないかもしれません。主人公の友人であり、後半に物語の鍵となる桃子の心情への踏み込みなどは、十分に作中におけるリアリティを持った書き込みがなされ、さらにはそのことが終盤に生きているだけに、人物によっては「敢えて読者にやきもきさせるために書かない」という手法を選択したにせよ、人物ごとの書き込みのムラが気にならないでもありません。
 また、登場人物の多さと物語の焦点が若干散漫な部分も感じられるような気がします。特に敵として描かれる人物の、(女性読者をターゲットとしたキャラクターとしての魅力ではなく)「敵役」としての、時として読者に不快感を与えるほどの強烈な魅力や存在感は薄い部分もあるかもしれません。
 いずれにせよ、世界観やキャラクターの造形などは非常に分かり易く魅力的な作品であるのは事実であり、多くの読者に受け入れられるだけの素材を持った作品であるのは事実でしょう。