キャサリン・コールター&J・T・エリソン 『略奪』

略奪 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))
 ニューヨークの美術館に貸し出されることになった、イギリス王室の至宝のダイヤモンド"コイ・ヌール"。この宝石の取り付けられた王冠の警護のためにニューヨークへと派遣されていた女性警察官が殺害されたという報せがロンドンに届きます。同僚であり以前は恋人でもあった女性の死に動揺しながらも急遽アメリカへと渡ったニコラス・ドラモンドは、FBIと協力して事件の捜査に当たることとなりますが、ニューヨークの美術館で展示されるはずだったダイヤモンド"コイ・ヌール"が偽物とすり替えられていたと聞かされ、さらにはそれに殺された女性警察官が関わっていた疑惑がわき起こります。さらには、この宝石盗難には、"フォックス"という凄腕の窃盗犯が関わっていて・・・。

 英国人のニコラス・ドラモンドとニューヨークのFBI女性捜査官マイク・ケインを主人公に据えた、サビッチ&シャーロックのFBIシリーズのスピンオフ・シリーズの第一弾。
 先に続編の方を読んでいたので、ある程度予備知識はあったものの、狡猾な窃盗犯"フォックス"との知略を尽くした駆け引きや、"フォックス"の意思ではないところで動く別の敵による思惑も絡み、本作は次々に怒涛の展開が波状攻撃のように襲ってくる一級のサスペンスに仕上がっています。
 何と言っても本作では、常にニコラスらの先を行く"フォックス"こそが、実に魅力的な強敵として描かれることが、そのまま作品の魅力につながっているとも言えるでしょう。