長らく積読していて気になっていたもの、ようやく読了しました。
上巻の半ばくらいまで、とにかく入り込めなくて中々読み進めなかったのですが、事件が展開するに従って一気に読むスピードもペース・アップしました。
ただし、序盤の展開の遅さとともに、擬古文ならぬ擬翻訳調の独特の空気というのが、物語りに入り込むのを阻害していたかなぁという印象。
前作同様それがこの作家の持ち味であり、古典ミステリを読み慣れたファンにはある意味魅力でもあるのでしょうが、これだけの分量になると少々序盤で手が止まる要因ではないかなとも思います。
また、あまりにもオーソドックスなミステリの王道であるがために、そしてあまりにもフェア・プレイであるために、いくつかの伏線は非常に読み易いのではないでしょうか。
最後の結末までは私は読めていませんでしたが、いくつかのトリックや犯人に関してもかなり予想出来てしまう範囲だったかなという気もしました。
ただ、こういうオーソドックス過ぎるほどオーソドックスなミステリというのは、やはり読んでいて楽しいですし、最後の最後に明かされる書き手の仕掛けたちょっとした錯誤のトリックが綺麗に決まっているので読後感は良かったです。
余談ですがこの物語の語り手、ノックスの十戒の中の「ワトスン役は一般読者よりごく僅か智力のにぶい人物がよろしい」をかなり思い出させるほど…と思ってしまったり。