エリス・ピーターズ 『アイトン・フォレストの隠者』

アイトン・フォレストの隠者―修道士カドフェルシリーズ(14) (光文社文庫)
カドフェルのシリーズ、14です。
今回は修道院に預けられた少年リチャードの祖母との対立の問題、そして農奴を追ってきた男の殺人、そして身分を偽ってこの地にやって来た若者に掛けられる殺人の疑い、さらにはリチャードの失踪と盛りだくさんな上に、女帝の臣下をめぐる歴史の水面下での出来事までが複雑に絡み合っています。
それぞれ何らかの関わりがあるのは読んでいて最初から分かるのですが、その全貌が見えて来るまでの過程、そして読後感まで含めて十分楽しめました。
ただ、カドフェルが積極的に何かをしたと言うよりも、事態が自然にそこへ向かって収束した、という面もあるのでその辺は、カドフェルの探偵役としての部分を期待した面では物足りないかもしれません。
それでも最後にカドフェルがヒューに懺悔をするように真実を語る場面など、今後を予期させてちょっと意味深にも受け取れました。