エリス・ピーターズ『修道士カドフェルシリーズ17 陶工の畑』

陶工の畑

 修道院が新たに得た土地から、女性の白骨死体が発見される――。
 現代の犯罪であれば、簡単に骨から整然の姿を復元するなり、鑑定するなりして身元の判明をする手段はあるだろうが、中世が舞台の本作ではそれが叶わないところに面白さがあります。
 二転三転する展開、そして意外な真相という点でも非常に良く出来た物語ではあるのですが、やむを得ない部分はあるとはいえ、どうにも真相に至る手掛かりが伏線として弱い気も若干します。『死体が多すぎる』などでは、逆に丁寧すぎる伏線を感じたので、そのクオリティを期待してしまうと些か物足りなさは感じました。とある人物の作為で覆い隠された事件の真相そのものについても、意外性の割には呆気なく感じた部分もあります。
 全体的に、事件は過去のものであり現在進行形ではないという点で緊張感が欠けるという弱さはあるものの、決してつまらなくはありません。

 "陶工の畑"という寓意と、それに対して陶工だった男が言った「土地は無垢なものです。人の利用の仕方によってしか、汚されることはありません」という言葉が何とも象徴的な作品でした。