2冊並んでいた時の表紙のデザインに釣られて手に取った本です。
主人公エド・ケネディは、ひょんなことで間抜けな銀行強盗の逮捕に貢献し、その直後から不思議なトランプが彼の元に届き始めます。最初に届いたダイヤのAには、3つの住所が書いてあり・・・と、本書はテンポ良くエドの周囲で何かが変わっていく物語です。
年齢を詐称して違法にタクシー運転手の職に就いているエドは、何の取り得もなく社会の落ちこぼれで、まともな職歴さえ無い自分に対して諦めすら持っています。
しょっちゅう、ぼくは自分に問いかける。「おいエド――おまえ、この十九年間で何をやった?」答えは簡単。
なにもなし。
『メッセージ The First Card』p31
老いた犬"ドアマン"とアパートで暮らし、幼馴染のオードリーに片思いしつつ、ただ何を為すでもなく生きていたエドは、届いたカードに込められたメッセージを伝え、その相手に対して、幸せを運ぶことを始めます。
ほんの少しの行動で、人は勇気を取り戻し、幸せになれたり未来を掴めるのだという本書のメッセージはしかし、決して綺麗事だけで終わっているわけではありません。
「できそこない」と見下されるエドと母親の間のどうしようもない溝など、救いの無い人のマイナス面も、そこには描かれています。
ですが、軽いタッチで描かれる個性豊かな登場人物たちの姿、エドと友人達、カードを通じて出合った人々との関係は非常に魅力的です。
ただ、中盤までは非常に楽しめたのですが、最後の最後があるがために、些か読後感に引っかかりを覚えてしまうの部分もありますが、最終的に上手く処理されて入るなとも思います。
もちろんちがう――あらゆる考え、あらゆる物語がそうであるように。きみがその世界にいるかぎり、どれも本物なんだ。
『メッセージ The Last Card』p294