[読了]桜庭一樹 『推定少女』

推定少女
 昨日風呂で半分だけ読んだ続きを本日の風呂で読み終えました。
 昨日は、『さよならの代わりに』を読んだ後、『推定少女』に取り掛かったので、2時間の長風呂となって少々フラフラでした。そんなことはさて置き。

 本書は、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』、『少女には向かない職業』と同系統のテーマの作品であるということは言えるでしょう。男でも女でもない「少女」という生き物の内包する絶望を描いた作品であり、いわゆる「セカイ系」の一端に連なるのかどうかは私には分かりませんが、その手のラノベが苦手な向きにはおそらく苦手なタイプの作品なのかもしれません。
 正直なところ、ストーリーそのものの緻密さはあまり感じられませんし、ラストのご都合主義を通り越して無理矢理風呂敷を畳むような終わり方も微妙といえば微妙です。ただ、少女VS大人、少女VS社会という図式を分かり易くかつ共感を得易い描き方で示したという点では、非常に面白い作品ではないでしょうか。

 毎日どこかで、ぼくたちは大人にころされてる。心とか。可能性とか。夢見る未来とかを。足蹴にされて踏みつけられて、それでもまた朝になったら学校に行かないといけない。
 そういった殺戮は、日本中いたるところで毎晩のように起こっているんだ。この瞬間だって、泣きそうになって夜空を見上げている中学生は、ぼくだけじゃない。
推定少女』p61

 大人になって描いたこの視点だからこそ共感できるというよりは、「少女」や「少年」に対するある種の幻想や理想というものが生々しさを持って語られている故に、読者はそこに惹きつけられるという面はあるのかもしれませんね。