リンダ・ハワード/ダイアナ・パーマー/アン・メイジャー 『あの夏を忘れない』

あの夏を忘れない
 本屋に行ったら、文庫にオマケのチャームが付いていたので、何となく。
 中味はコテコテのロマンス小説、しかもいわゆるアンソロジーではありますが、邦版タイトルの「あの夏を忘れない」とあるように、夏にまつわる短編、とかの統一性があるわけでもありません。
 良く分かりませんが、「サマー・シズラー」という企画で毎年この手のものがあるらしいです。

 内容的には、一番面白かったのはリンダ・ハワードの『大停電に祝福を』でしょうか。
 アメリカの大停電というのも、そういえばそんなこともあったなぁと思い出していたわけですが、この短編に出てくる男の書き込みはさすがに上手く造りこんであるなぁという印象。彼が自分のことを何ひとつ話さずにいた理由というのは、作中でも語られるように、そんなこと普通言われても信じられないだろうというものではありますが、それを作中においてキッチリ整合性を持たせている辺りは評価に足る部分でしょう。
 ダイアナ・パーマーの『恋と冒険とカウボーイ』は、どうもこの男、コロコロとやることに一貫性が無いのが気になりましたし、主人公の女性の書き込みも少々甘いですが、まぁ短編ですし。こんなものかなぁ、程度。
 アン・メイジャーの『欲しいのはあなただけ』は、裏表紙のあらすじにあるように、「個性豊かなヒロイン」ということでは確かに個性豊かですが、普通はこのタイプの女って「彼の昔の女」で、非常に嫌味な敵役になるんだろうなぁといったところが面白かったです。