ミステリ書店"バイ・ザ・ブック"で、女性ノンフィクション作家のエンジェル・スタークの朗読会が催されます。彼女はかつて社交界の華であった女性の死にまつわる新刊を出し、そのことで関係者からは憎まれています。いくつか不穏な動きはあったものの、無事に朗読会が終わったことにホッとする店主のペネロピーですが、店で働いている女の子の交際相手がエンジェル・スタークと消えて、翌日になっても姿をみせなくなってしまいます。
そしてエンジェル・スタークと、もうひとりの女性までが姿を消し――。
未亡人の女性店主と、彼女としか意思疎通の出来ない幽霊探偵ジャックのシリーズの2冊目。
途中から探偵が生前解決した事件と現在進行形で起こっている事件をオーバーラップさせる辺りは面白いものの、エンジェル・スタークが書いた暴露本の内容や当時の事件について語る部分が些か不足しているようにも思えます。加えて全ては客観的な事実の裏付けの薄いジャックとペネロピーの推理で導かれる印象もあるのは残念なところ。
全体として見れば、事件そのものは小粒ですが、シリーズとしてはほんの少しだけ進展した感じもあり、次作以降で主人公のペネロピーと彼女の死んだ夫の一族との間の不協和音、そして幽霊となって古書店に居続ける探偵ジャックの謎などがどう展開するのかは楽しみです。