三津田信三 『五骨の刃 死相学探偵4』

五骨の刃  死相学探偵(4) (角川ホラー文庫)

 猟奇的な展示を行った屋敷で起こった連続殺人事件。その事件現場へ肝試しに行ったという管徳代という女性には、不気味な死相が現れていました。死相を見ることが出来る探偵として、彼女に襲い掛かる死相の原因を探ることになった弦矢俊一郎に、その惨劇の館の事件の背後にはこれまでも様々な事件を引き起こしてきた黒術師の存在があることが知らされます。

 シリーズ4作目である本書も、ホラー的な要素を存分に発揮しながらも、比較的ミステリ寄りの立ち位置で物語は展開します。著者の多くのファンにはもっとホラー寄りの「怖さ」を期待する向きも多いのでしょうが、シリーズに銘打ってあるように本作では、主人公が死相学「探偵」として、何故その死相が現れたのかを解き明かすことで事件を解決するという立ち位置を明確に打ち出しているからこそのスタンスで、またある程度読者層をライトノベル読者へと向けて描いたゆえに、こうしたものになっているのでしょう。
 ですが、『七人の鬼ごっこ』の垂麻家、『厭魅の如き憑くもの』の谺呀治家、『百蛇堂』に登場する閇美山犹國、『椅人の如き座るもの』の人間工房など、著者の他作品に登場する固有名詞が登場するなど、その世界観の根底には、これまで著者が描いてきた確固たるホラーの血脈を見ることも出来ます。
 ミステリとしては非常にオーソドックスなフーダニットの結末とも言えますが、犯人の解明と同時に問題となる、被害者間にあるミッシングリンクの解明については、公正に情報を提示しつつもミスリードをまじえて巧妙に練られたものになっています。
 シリーズとしても、今後の展開が益々楽しみな一作。