アリス・キンバリー 『ミステリ書店3 幽霊探偵とポーの呪い』

幽霊探偵とポーの呪い ミステリ書店3 (〔ランダムハウス講談社文庫〕―ミステリ書店 (キ2-3))
 伯母と共同経営でミステリ書店を営むペネロピーは、伯母の古い知人であるピーター・チェスリーが売りたいという稀覯本を引き取りにチェスリーの住む屋敷まで出向きます。ですが、ペネロピーが蔵書を受け取った直後、足が悪くて二階には上がらないはずのチェスリーが、何故か階段から謎の転落死を遂げます。さらには、チェスリーから引き取った貴重なポーの全集を高値で買い取った人物までもが、不可解な事故死を遂げます。そして調べるうちに、このポーの稀覯本には宝の隠し場所を示した暗号が隠されているという話までが出てきますが…。

 半世紀前に何者かに殺され幽霊となった探偵、ジャック・シェパードと、夫を亡くして女手ひとつで息子を育てながら書店経営をするペネロピーとのコンビもこなれてきており、シリーズとしても安定したクオリティを維持していると言えるでしょう。
 ポーの稀覯本が事件の鍵となっていることは、割と最初からミエミエではあるものの、犯人に結び付く伏線やミスリーディングもしっかり施されています。
 ただ、『ダヴィンチ・コード』ならぬ『ポー・コード』に関しては、これを読者に推理させるという意図がまるでなく、その点がどうにもあっさりと脇へ追いやられている点が残念といえば残念。
 ですが、半世紀前に生きたハードボイルドの探偵と、現代に生きるバツイチ子持ちのキャリアウーマンとのズレているようで絶妙の絡みを見せる掛け合いなど、終始テンポ良く楽しめました。