三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台』

ビブリア古書堂の事件手帖7 〜栞子さんと果てない舞台〜<ビブリア古書堂の事件手帖> (メディアワークス文庫)

 ビブリア古書堂にやってきた吉原という男は、脅迫まがいの取引も厭わない危険な古書店主であった、久我山の弟子であり、栞子の母である智恵子との因縁のある老獪な小道具商でした。栞子たちは、彼が手にしている3冊のシェイクスピアのうち、ファーストフォリオと呼ばれる稀覯本がどれなのかを当てなくてはならないことになってしまいます。

 長らく続いたシリーズも、本作でもって一応のシリーズ最終巻。栞子と母親の智恵子との確執や、智恵子の過去やその行動の謎もだいぶ明らかにされ、さらにはシェイクスピアの古書という世界的に大きな存在をガジェットとして用いた贅沢な結末が本作では描かれます。
 栞子と対立する立ち位置にいた智恵子に加え、本作ではすでに故人ではあるものの、作品世界に大きな影として存在していた久我山の系譜と言っても良い悪役として、古物商の吉原という男が登場します。一筋縄ではいかない老獪な相手と、母親の智恵子を敵に回し、栞子たちは入札の場での対決をすることになります。
 緊迫感のある入札シーンや、窮地からさらに窮地へと追い込まれる展開、どんでん返しの面白さなど、エンタメとしてもシリーズ内屈指の一作と言えるでしょう。
 最後に明かされる久我山の意図と、智恵子の思惑、それらを乗り越えた栞子と大輔の「これから」が見える良い結末でした。