三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ』

ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)

 かつて太宰の稀覯本を奪うため、栞子さんに怪我をさせて逮捕されていた田中が保釈されることになりますが、田中は祖父が持っていた太宰の『晩年』の稀覯本を探して欲しいと依頼してきます。警戒しながらもこの件の調査に乗り出した大輔と栞子さんですが、太宰が好きで議論を戦わせていた田中の祖父を含む若者たちの交流が突然途絶えることになった四十七年前に何が起こったかを調べるうち、太宰の稀覯本の盗難事件があったことと、そして彼女の祖父がこの件に関わっていたことを突き止めます。

 シリーズ6作目となる本作では、第1作でも出てきた太宰の別の稀覯本が再び取り上げられることになります。
 太宰の稀覯本を巡り、47年前に袂を分かった四人の間に何があったのかという謎が、その過程で行方不明になった稀覯本の所在に繋がります。
 本作は、シリーズ第1作で登場した事件が根底にあると同時に、栞子さんと大輔のそれぞれの祖父母という、主要登場人物のルーツにも関わる物語となっています。
 相変わらずの、書物に関する幅広く詳細な薀蓄の面白さと、古書を通じて掘り起こされるその持ち主たちの心情や真実といったものがミステリという手法で最大限に上手く調理されており、シリーズとしての安定感は健在で、安心して読める1冊と言えるでしょう。