積読本を1冊消化。
ミス・マープル物というよりは、クリスティお得意のロマンスとサスペンスをいい配分で合わせた作品といった印象の1冊。
物語の語り手である主人公のジェリー・バートンとその妹のジョアナは勿論、ナッシュ警視や村の人々など、やはり愛すべき個性の持ち主が魅力ですね。勿論かなりデフォルメされてはいますが、「そういう性質を持った人」っているなぁと思わされるような人物が、登場人物の中に一人くらいはいそうな気がしてきます。
「誰が悪意と中傷に満ちた手紙を出したのか」「その理由は何故か」という謎を終始追いかけて、最後の最後にミス・マープルが鮮やかに謎解きをしてくれます。ただ存在感はやはり大きいものの、ミス・マープルが登場するのは本当に終盤だけで、シリーズ作品としては少々フラストレーションもありました。
何より語り手のジェリー・バートンの脳裏に引っかかっていた暗示的な物が、英語で書かれていないとヒントになっていないのが辛いところですね。
それでもやっぱりクリスティが自薦の十作に入れているだけあって、クリスティらしい雰囲気たっぷりの作品でした。