J・D・ロブ 『白衣の神のつぶやき―イヴ&ローク8』

白衣の神のつぶやき―イヴ&ローク〈8〉
 シリーズもこれだけ続くと中だるみしそうなものですが、それなりのテンションを保っているあたり、コンスタントにベストセラーを出し続けている作家の底力なんでしょうね。
 健康状態の悪い、放って置いてもそう長いこと生きられないようなホームレスが、極めて高度な外科手術で心臓も持ち去られるという、残虐な犯行が行われます。この事件で最初に現場に来ていた制服警官は、イブに並々ならぬ敵愾心を抱いており――と、事件そのものに加えて人間関係の面でも、起伏のあるストーリー展開となっています。
 また、これまでのシリーズの蓄積があるために、この巻でイブに課される試練が生きて来ていると言えるでしょう。
 贅沢を言えば、割と早い時期から事件の容疑者は出揃っているわけですから、もう少し犯人側の書き込みを犯人自身のモノローグ以外の部分でしていれば、推理という面でも楽しめたのかなという気はします。