シオドア・スタージョン 『輝く断片』

輝く断片

 割とミステリ寄りな短編を集めてはありますが、冒頭の3篇はどちらかと言えばSFですし、あるいはSFというジャンルが苦手な読者には向かない荒唐無稽さがあるかなという印象。
 表題作『輝く断片』を中心に集められた他の5篇は、ミステリと言っても心理サスペンス的な要素が強く、殺人という行為に走る人物の狂気が具現化する瞬間を描いた作品群。だから決して読んで後味の良いものでは無いですし、救いのない話でもあります。
 ですがそうした部分で、特に『ニュースの時間です』『マエストロを殺せ』『ルウェリンの犯罪』の3作や、『君微笑めば』において描かれる、救いの無さや人間性の嫌らしさは秀逸でしょう。
 おおかたのストーリーそのものは決してオリジナリティが頭抜けて高いわけではありませんし、中には読むのが少々苦痛なものもありますが、非常にスタージョンの個性が良く出た短編を集めた1冊なのかもしれません。