ジル・チャーチル 『ゴミと罰』 

ゴミと罰
 夫を亡くした傷からはまだ完全に立ち直っていないものの、ジェーンは三人の難しい年頃の子供を抱える主婦として、子供の世話や地域の人たちとの付き合いをこなすまったく普通の主婦。ですが彼女の隣人シェリイの家で集まりが開かれる日に、そこに派遣されていた掃除婦が何者かに殺される事件が起こり、シェリイとともに事件に関わるようになってしまいます。何人もの人間が入れ替わり立ち代り出入りしていたシェリイの家で、何故掃除婦は殺されたのか。

 誰もが顔見知りという限られた地域コミュニティで起こる殺人事件に、家事や子育てをしている平凡な主婦が巻き込まれて、隣人達の話を聞いてまわるうちに思わぬ事実が浮かび上がり、事件の真相に迫るという、コージーミステリのお手本のような作品。
 微妙な年頃に差し掛かった娘に手を焼いたり、隙あらば干渉してくる義母をかわす毎日の中で、平凡な一人の主婦をリアリティを持って生き生きと描いた良作だと言えるでしょう。また登場する脇役達もそれぞれが個性豊かで、良い意味で癖のあるキャラクターが成立しています。
 事件の真相への筋道も、主婦探偵ならではの伏線が上手く行かされていますし、邦訳の読みやすさも併せて、サラリと読めました。