レスリー・メイヤー 『メールオーダーはできません』

メールオーダーはできません (創元推理文庫 M メ 2-1)
 通販会社の電話受付のオペレーターの仕事をしている主婦のルーシーは、ある晩休憩に外へ出た際に、地元の名士でもある会社経営者のサム・ミラーが彼の車の中で死んでいるのを発見してしまいます。主婦としてクリスマスの準備に奔走する傍ら、事件にどんどん首を突っ込んでいくルーシーですが、ひょんなことで一緒に事件を追うことになった地元警察の巡査までもが不可解な事故に遭ってしまいます。

 いわゆる主婦を主人公に据えたコージーミステリとして、主婦の忙しない日常や悩み事が語られる中で、地域の住人達の人間関係が浮かび上がり、事件の真相に辿り着いていくというパターンを踏襲した作品。
 決して金持ちでは無いけれども典型的なアメリカの中産階級の主婦として、働き口の上司への不満や地域ボランティアを通しての地元との繋がりを持つ主人公の日常は、それだけでも決して単調で退屈な物語には終わってはいません。
 ただし、主人公が事件の真相へと辿り着くまでの過程は、読者に対して十分な手掛かりが提示され、推理によって辿り着くことが出来るかといえばそういうわけではなく、どちらかと言えば成り行き任せになっているうちに犯人に辿り着いたという印象も。
 正直なところ、犯人の隠ぺい工作のための行動には多いに疑問もありますし、事件に関係ある伏線かと思わされたルーシーの一家に起こったとある悲劇が物語り上必要だったのかといえば微妙なところという気もしますが、総じて主婦を主人公に据えたコージーミステリとしては十分に楽しめるレベルと言えるでしょう。