神永学 『心霊探偵八雲4 守るべき想い』

心霊探偵八雲4  守るべき想い (角川文庫)
 教育実習で小学校にやってきた晴香は、そこで幽霊が見えるという少年に出会います。自分は呪われていると言って頑なに彼女を遠ざける少年に、何か事情があるのを感じた晴香は八雲に相談を持ちかけます。父親を殺して逮捕されたものの、精神鑑定中に逃走した男の事件と、人体発火としか思えない状況で発見された男の焼死体に、少年の「呪い」はどう関わっているのか。

 八雲と晴香のサイドの出来事と、警察で捜査中の別件の事件が結び付いていく過程というのは、前作までと基本的な構造は本作においても大きな変化はなく、幾つかのガジェットから二つの事件のかかわりを読者が先読みすることには、全く難易度はないと言えるでしょう。
 ただ、「人体発火」と「呪い」の処理の仕方は実に綺麗に行なわれており、謎の提示とその解明の過程の演出は、これまでのシリーズ序盤よりも格段に面白くなっており、作品の質も安定感を見せているように思えます。
 その上で、リーダビリティの高さとキャラクターで読ませるだけの要素を保持している点は、評価すべきところでしょう。
 シリーズ全体の流れである、八雲の出生や血族の存在といった要素に関しては、若干思わせぶりすぎる演出という感も否めませんが、普通にライトノベルテイストのミステリとして楽しめました。