アンソニー・ホロヴィッツ 『スケルトンキー』

スケルトンキー (集英社文庫)
 ウィンブルドンでボールボーイをしながらの潜入をし、中国マフィアの陰謀を阻止したことで命を狙われることになったアレックス。彼はCIAの仕事を手伝うことで当面国内から出て中米のリゾート地に滞在することになりますが、父母役に扮して耕作活動をするCIA工作員達はアレックスに対して冷淡な対応を取ります。そして、核燃料を手に入れて世界に危機を及ぼす何かを画策しているらしい旧ソヴィエトの軍人サロフ将軍に捕らえられたアレックスは、彼から思わぬ提案をされます。

 アレックスシリーズの第三弾。
 物語の展開のパターンは前二作とほぼ同様のものになっていますが、その陰謀のリアリティが前作までよりは確立されていることや、敵として描かれるサロフの内面性に踏み込んだ描写がなされることで、アレックスの葛藤が上手い具合に浮き彫りにされていると言えるでしょう。
 彼が14歳の「子ども」であることで、本来はごく当前に受けられる大人から庇護される権利を無視される理不尽さや、それでいながら一人前の責任ある人間としての意志も汲んでもらえないというジレンマが描かれており、本作ではこれまでのシリーズ作品から大きく一歩踏み出して、登場人物の掘り下げがなされています。
 あとがきでは2作目に続いて若干のネタバレがあるので注意。