ディミティおばさまの家に住んで、子育てに追われて自分のことにも気が回らないロリを心配した夫のビルや、彼女を見守る幽霊であるディミティおばさまの計らいで、子供の世話や家事の手伝いのために村の農園の娘フランチェスカが雇われることになります。そしてようやく外へ目を向けたロリに課されたのは、出土した発掘品を巡って、遺跡の発掘の賛成派と反対派の対立騒ぎでした。この騒動をおさめるために、牧師館から盗まれたと思われる古い目録を探すために奔走するロリは、村の住人の思わぬ対立の歴史を目の当たりにすることになります。
どこかのんびりとした田舎の村を舞台にした、実にコージー・ミステリらしい作品。シリーズの前二作と比較すると、これまでは村の外へ出かけての事件解決が多かったのに対し、本作では小さな村の中に舞台を限定し、個性溢れる住人たちを描いた作品となっています。
偶然の発見から調査発掘を行なう考古学者が村を訪れることで、ローマ時代の遺跡が発見され、村が観光地として潤うことを期待する受け入れ賛成派と、余所者が引っ掻き回すことを嫌う強硬な反対派で、村は真っ二つに割れてしまいます。さらには反対派のリーダーであるペギー・キッチンが実にやっかいな女性であり、ロリをはじめ多くの登場人物が彼女に引っ掻き回されることになります。
大戦によって生まれた対立や、古くから抱えた住人間の感情のしこりが爆発し、さらにそこに遺跡発掘を巡る怪しげな動きも加わって、事態は混迷を極めることになります。
事件の顛末は、単純な勧善懲悪に基づく大団円ではなく、村の住人の間でもつれた感情の意図を解きほぐしての解決であることが、本作の優しい読後感をもたらしているといえるでしょう。