伊坂幸太郎 『オー!ファーザー』

オー!ファーザー
 ギャンブル好きの鷹、物識りの悟、女性にもてる葵、中学教師の勲という、母親が自分を身ごもった同時期に交際相手だった「四人の父親」を持つ高校生の由紀夫。理由も見当たらないのに不登校になった同級生、何やらやっかいな相手に目を付けられた友人、父親の一人に連れて行かれたドッグレースで見かけた怪しい行動を取る人物。意に反してそうしたものに巻き込まれた由紀夫を助けるために、父親たちは奮闘します。

 著者自身が、『ゴールデンスランバー』以降を第二期、それ以前を第一期作品と位置付ける中、第一期の最後の作品となる本作は、確かにそれまでの「伊坂幸太郎らしい」テイストに溢れた作品といえるでしょう。
 どこか荒唐無稽さの入り混じった設定が織り成す物語を、飄々とした登場人物の洒脱な会話で引き込んで読ませるという、お馴染みのスタイルで本作は展開していきます。そして、さりげなくちりばめた大量の伏線回収とともに、そこに描かれる登場人物たちの間にある確かな関係はスマートでありながらも熱く、痛快で格好良さに溢れる「第一期」の伊坂作品が好きな読者には、久々に文句なしに楽しめる内容となっていると言えるでしょう。
 作中にちりばめられた、伏線とも思えないような伏線の欠片が次々に拾われていくさま、個性豊かな四人の父親たちの格好良さを十二分に楽しめる一作。