空き家で指定の時間にランタンを灯すこと、道を尋ねてくる男に答えを教えること、そしてある屋敷へ行き、そこで相手の話に合わせること――わけの分からない頼みごとが書かれた友人の手紙を受け取り、ラルフは怪訝に思いながらもただならぬ友人の様子が窺える文面を見て、その指示に従います。ですが、戦争で死んだはずの妻にそっくりな女性を伴った男が現れ、さらには向かった先の屋敷での奇妙なパーティの末、殺人事件まで起こってしまいます。不利な偶然が重なり、疑いまで掛けられたラルフは、この不可解な状況を解き明かし、自らの窮地を脱しようと試みますが…。
友人の奇妙な手紙から始まり、現実離れした思わぬ出来事が次々に襲い掛かる中盤までの不可解に満ちた展開が、実に魅力的な作品。そして、ここで描かれる不可解な状況が、実に上手く偶然と作為の入り混じった末の産物であることが徐々に解き明かされる結末も、著者らしいムード作りと合理性とが綺麗に結実したものとなっていると言えるでしょう。
良くも悪くも「落ちるべきところに落ちた」という印象の結末ではありますが、巻き込まれ型の怒涛のサスペンスとして、計算しつくされたシチュエーションの演出が秀逸な作品。