コリン・ホルト・ソーヤー 『殺しはノンカロリー』

殺しはノンカロリー (創元推理文庫)

 美容のためのダイエット・プログラムを提供する滞在型の施設で、従業員がサウナで蒸し焼きにされるという残忍な殺人事件が起こります。この施設のオーナーである友人から、事件を調べて欲しいという依頼を受けたアンジェラとキャレドニアの老女二人は、高級老人ホームカムデンを出て、この施設に利用客を装って滞在することになります。

 シリーズの番外編である本作では、<海の上のカムデン>の馴染みのメンバーたちは登場しないものの、舞台となる美容スパの滞在客たちも、カムデンの入居者に負けず劣らず個性的であり、シリーズ読者の期待を裏切らない楽しい作品となっています。また、アンジェラとキャレドニアの老女コンビは相変わらずですし、彼女らの大好きな「ハンサムな警部補さん」のマーティネスやスワンソン刑事も登場し、取り立てて「番外編」という空気を意識することもないでしょう。
 そんな本作では、厳しいダイエット・プログラムをとことんやらずに済ませようとする運動嫌いのキャレドニアと、周囲に怪しまれるからと苦言を呈すアンジェラとの密かな攻防など、事件の本筋以外の部分もユーモアに満ちています。
 どこか人を食ったような、愛嬌たっぷりな老女コンビの活躍が何とも楽しい1作。