有川浩『シアター!2』

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

 借金を2年以内に返済できなければ解散。劇団の主宰の巧の兄の司が突きつけた条件を前に、一丸となってスタートを切った弱小劇団「シアターフラッグ」。ですが、そんな彼らの前に、物販のためのグッズの製作でのぶつかり合いやら、また掲示板に悪質なコメントを書き込まれたりと、次々に問題がわき起こります。

 『シアター!』に続き、おそらくは三部作の第2作目に当たる本作では、借金返済にむけて奮闘する劇団員たちそれぞれにもスポットを当てつつ、各章ごとに視点を変えた群像劇にしたことで、作品世界を構成する登場人物たち一人一人が際立ち、前巻よりもぐっと面白くなってます。
 劇壇存続のための期限に向けて、物語の時間は容赦なく進む中、各章においてそれぞれのキャラクターの内面や彼らの人間関係に踏み込むことで、本作では「シアターフラッグ」のメンバーたちが一層の魅力を持つ、物語の「構成員」として血肉を供えた存在にすることが出来たと言えるでしょう。
 そのままでは「いかにも」な典型的なその配置にあるキャラクターで終わった彼らに、現代日本社会の構成員としては不可欠な経済活動の概念を突きつけ、どこか地に足のついたといえる物語に放り込むことで、作品世界において「生きている人間」としてのリアリティを与えることに成功しているとも言えるでしょう。
 「シアターフラッグ」が残された期間で存続を果たすことが出来るのか、そしてそれぞれ彼ら個人の物語がどうなるのか、続きを更に期待させられる一作。