"断食(fast)"を"断つ(break)"という語源を持つ"Breakfast"をタイトルに持ってきた、日本のハードコア/ラウドロック・バンド、Pay money To my Painの初のベストアルバム。
PTPはエクストリームやニューメタル的な曲から叙情的なアコースティックサウンドまで、そしてスクリーモ/クリーンを使い分けるVo.スタイルなど、非常に幅広い表現力を持ったバンドと言えるでしょう。
このアルバムでは比較的叙情的なメロディで静かに"痛み"を歌い上げるナンバーが多く、ジャンルを問わず広くお勧め出来る1枚。
アルバムの幕開けには2曲の新曲が配置されており、#1 Sweetest vengeanceは、ドラム/ベース/ギター/ヴォーカルのすべての悲壮なまでの咆哮で幕を開ける激しいナンバー、続く#2 Innocent in a silent roomはクリーンなヴォーカルとコーラスのどこまでもメロディアスな絡みを聴かせる対照的なナンバーとなっています。
そして後に続く16曲は、発表されたアルバム順の並びとなっており、これまでのPTPを総括するものと言えるでしょう。
切なく痛みを歌い上げる#5 Homeや、#15 Pictures、文句なしの名曲の#6 Another day comes、皮肉と強いメッセージが込められた#11 The answer is not in the TV、何処までも優しいラブソングの#12 Same as you areなど名曲揃い。
個人的には"Remember the name"に収録されている"This life"なんかもベストには収録して欲しかったところですが、収録された曲は2曲のアルバム未収録曲を加えて確かにPTPというバンドを語るベスト盤に相応しいラインナップとなっています。とはいえ、これまでのアルバムを聴いているファンにとっては、Live40がノーカットで収録されたブルーレイ・ディスク付きの初回特典盤以外の通常盤では物足りないかもしれません。
ベストアルバムと言っても、これまでに出したアルバムは3枚ですし、これからの伸びしろも期待されるバンドなので、正直まだベスト盤を必要とするバンドとも思えませんでしたが、制作中の4thアルバムまでの間のリスナーの「飢餓を断つ」という位置づけであり、その間バンドとしてのある程度の利潤を必要とする日本の音楽シーンの事情などもあってのリリースだったのでしょう。
ですが、年が明けて2013年、1月10日に発表されたVo.のKの急死により、本当の意味でこのアルバムがPTPのベストアルバムとなってしまいました。
ラウド/パンク/メタルなどのジャンルは日本の音楽シーンの中でも決して人気のあるジャンルではありませんし、世界というステージから見れば、言語や文化的背景の違いという問題で、一部のヴィジュアル系などのコンテンツを除けば、どうしても後れを取っていると言わざるを得ないでしょう。
そうした中にあってPTPというバンドは、世界を舞台にする海外のバンドと同じスタートラインに立てる、数少ないバンドだっただけに、Kの喪失はPTPというバンドだけにとどまらず、埋めることのできない大きな損失でした。