J・D・ロブ 『もっとも危険なファンタジー イヴ&ローク31』

もっとも危険なファンタジー イヴ&ローク31 (ヴィレッジブックス)
 ゲーム開発会社の代表で天才的開発者の青年が自宅で殺されます。大きな幅広の剣で首を落とされたと見られる異様な死体で発見された男は、死の間際までゲームをやっていた形跡があり、セキュリティを突破して外から何者かが侵入した形跡は見つかりませんでした。事件の主任捜査官になったイヴは、夫のロークの助けを借り、電子機器に精通していると見られる犯人を捜し出すために捜査を開始します。

 限りなくリアルに感じられる近未来のゲームというヴァーチャルなモチーフと、近しい関係にある人間同士の関係に潜む生々しさの対比が印象的な一作。
 殺害方法に関しては、割と初期の印象通りのものでしたが、仮想現実の世界を介して、その背景にある犯人の欲望が暴かれていく終盤の面白さや、別の事件と重ね合わせることで分かり易く親しい人間関係に潜む殺意を可視化するなどの手法に、著者の上手さを見てとることが出来るでしょう。
 現実とファンタジーの境目があやふやになる怖さは、現代のゲームやネット社会にも通じるものがあり、そうした部分でも読ませてくれる一作かもしれません。