古野まほろ 『セーラー服と黙示録』

セーラー服と黙示録 (角川文庫)

 三河湾に浮かぶ小島にある聖アリスガワ学園は、日本にありながらヴァチカンに属し、探偵を養成する女学校。この学園に通う島津今日子は、三年生の先輩たちの卒業前の特別試験に立ち会うことになります。

 パラレルワールドの日本の、著者の一連の世界を舞台にした作品。本書もシリーズとして展開していることを思えば、この1冊はまずシリーズの導入であるということは頭の隅に置いて読むべき一作かもしれません。事件が起こるまでのテンポの悪さや、事件そのものが解決しても何となくスッキリしない結末も、これが新シリーズの幕開けとしての役割を持った物語であることを思えば、今後へ続くイントロダクションであるがゆえなのでしょう。
 現代的で「キャラが立っている」登場人物たちや、その独特の(ある種意味不明な)語り口調であるとか、装飾過剰とも言える衒学的な書き込みなど、必ずしも広く一般受けしない読み口でありながらも、本作が徹底した世界観の作り込みで成立する舞台立てを十二分に生かしている作品であるのは事実でしょう。
 また、ハウダニット(トリック)、ホワイダニット(動機)、フーダニット(犯人)の三つの推理要素を分けて、それぞれを受け持つ探偵役に振り分けるという手法は、少なくとも本書の時点では完全に分離しきれてはいないものの、主要な三人のキャラクターの存在意義を裏打ちするものとしているのと同時に、事件の結末をより読者に対して明快に提示しているとも言えるでしょう。