今回は、これまでの図式とはちょっと違っていて新鮮でした。
これまでほとんどの作品で共通する図式としては、イングランドの王位継承戦争に関わっている男女のロマンスと、その中で起こる殺人事件が物語の軸だったと言っても良いでしょう。多く場合はこの殺人事件の容疑者として疑われている青年と、彼に心を寄せる美しく聡明な女性というのが出て来ています。
その点今回は、殺人事件そのものは起こるのも終盤ですし、物語の軸となっている事件はむしろ過去にあるわけです。
瀕死のさ中でカドフェルとラドルファス院長に懺悔をしたハルイン修道士の過去の罪、そしてその罪から解き放たれることこそが物語の着地点です。そこに絡む、若い男女の苦難ということに関しては、二人の事情が明らかになった時点ではもう着地点がほぼ見えていますしね。
やはり予定調和のような結末には落ち着きますが、そこに嘘臭さは感じられず、読後感も良かったです。