デヴィッド・セルツァー 『オーメン』

オーメン
 ホラー映画『オーメン』の脚本家自らの手による小説版。
 2006年6月6日と、「666」ということで、リメイクされた映画も公開されるようで、そこに合わせての復刊らしいです。
 読んでみて感じたのは、小説の原作から映画になって人気を博すことはあっても、映画から小説という逆のパターンは難しいのかなということ。
 映画は映像と音声により、視覚的・聴覚的なものからイメージを引き出されるので、映像に携わった後でのノベライズというのは、どうしてもその映画のイメージを土台に全ての描写が行われるのでしょう。
 逆に小説と言うのは、何もないところから文字だけで読み手のインスピレーションを引き出すべく描かれるのですから、この土台の違いと言うのは現れがちなのかもしれません。

 その意味では本書も、いかに脚本化自身の手によるとはいえ、昔のあの『オーメン』を見ていれば読んでいて場面場面を想起させられますが、果たして独立した小説としてはどうなんだろう?と思う部分はあります。
 とりあえず、小説では悪魔の子のデミアン(ダミアン)の存在感というのは、あるようで薄かったです。
 もっとも映画自体も、今見ると昔感じたほどの不気味さは無いのかも知れませんが。