パーネル・ホール 『絞殺魔に会いたい』

絞殺魔に会いたい
 ローゼンバーグ・アンド・ストーン法律事務所の雇われ調査員をするスタンリー・ヘイスティングスは、仕事で向かった先で立て続けに依頼人が絞殺されているという事態に陥ります。事件の担当になったクラークは、あからさまにスタンリーを疑っており、見当外れな捜査には気弱なスタンリーも腹を立てます。

 気弱で冴えない中年男、スタンリー・ヘイスティングスのシリーズ第4弾。
 本作でも死体の発見者となってしまったスタンリーは、相変わらず死体を見ては現場のトイレで吐いていたり、主人公の味のある素人っぷりを見せてくれます。警察は自分よりも優秀であると認めながらも、見当違いなことを主張する部長刑事のクラークへの不満を、自分の妻やすっかり親しくなり信頼を寄せるようになった刑事のマコーリフに愚痴ったりする主人公の味が何とも絶妙。
 成り行きで事件に関わってしまい、警察から疑惑を向けられたりしながら徐々に自分から事件の解明へと乗り出す流れは、これまでのシリーズでもすっかりお馴染みのパターンと言えるでしょう。この辺り、良い意味でのパターンの確立が成されており、安心して読めるクオリティが保たれた作品です。
 ただ、終盤でスタンリーが事件の真相に気付くきっかけとなるのがクリスティの作品であるのですが、既存作品のネタバレは回避しているものの、その作品を未読の読者には、今ひとつ分かり難いことになっている部分もある気はします。
 二転三転する事件の真相と、クラークとスタンリーの駆け引きにもなっていない駆け引きなど、起伏に富んだ展開と、終始に渡ってのテンポの良さで読まされる1冊。
 最後にクリスティの作品をスタンリーに言われて読んだマコーリフと、スタンリーの会話で、思わずニヤリとさせられる部分もありました。