ジェイン・アン・クレンツ 『緑の瞳のアマリリス』

緑の瞳のアマリリス (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1) (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1) (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1)
 惑星セント・ヘレンズの入植者たちには、レベル10までの様々な超能力者と、その能力を発揮させるための補助能力者「プリズム」が存在しています。そして能力者を補助するその「プリズム」として、アマリリスは並外れた能力を持つトレント社の社長ルーカスと契約を結びます。ルーカスから請け負った仕事の際にアマリリスは、大学で彼女が師事したランドレース教授の関係者が、倫理的に問題のある能力者に協力していることを察知します。この事件に首を突っ込むことになったアマリリスとルーカスは、能力者の倫理基準について厳しい観念を持っていたランドレース教授の事故死の真相を探ることになります。

 ロマンス小説の世界でも一風変わった癖のある作風で定評のあるジェイン・アン・クレンツが書いた、「SFロマンチック・サスペンス」。ロマンス小説の世界では「パラノーマル」という区分に分類される作品のようですが、普通にSFとしては読みやすく、また世界構築が作中で描かれるロマンスそのものにしっかりと必然性を持っているという意味では、それなりに面白いものになっていると言えるでしょう。
 この種の作品にありがちな、説明ばかりの導入部でつまづくというようなこともなく、その意味ではガチガチのSFには馴染めない読者も入りやすい作品かもしれません。また最後の最後まで上手い展開で読ませるサスペンスも楽しめました。