雪乃紗衣 『彩雲国物語 隣の百合は白』

彩雲国物語隣の百合は白 (角川ビーンズ文庫 46-15)
 女っけの欠片もない生活を送る武官の戦意高揚のため、年老いてもなお老若男女問わずに人々の憧れの的である人物の「恋愛指南」を報償にしたことで異様な盛り上がりを見せる武術仕合の顛末を描く『恋愛指南争奪戦』。国きっての名門である紅家の長男として生まれ、過酷な道を歩むことになった邵可の若き日を描いた『お伽噺のはじまりは』。絶対的に盲従する兄以外には人を人とも思わない黎深と、紅家に仕える数奇な運命を持つ百合、そして後の語り草になる国試の同期たちを描く『地獄の沙汰も君次第』の三篇を収録した番外編。

 所詮借りて読んでいるだけなので、すでに登場人物の多さと書き分けの弱さで本編の登場人物は把握しきれていないのですが、キャラクター小説全開で楽しめる番外編的な本書は、このシリーズでは久々にツッコミ無しで読めます。
 文章の荒さや小説としての表現力の浅さなどは目に付かないわけではありませんが、それを補ってあまりある登場人物の「キャラ立ち」は一応の評価に値するものかもしれません。