ノーラ・ロバーツ 『キスで終わる夜明け』

キスで終わる夜明け (MIRA文庫 NR 1-37 NIGHT TALES 5)
 警察官の父を持つアリソンは、連続窃盗事件の被害者物色の場となったと思われるナイトクラブへの潜入捜査をすることになります。昔アリソンの父親が更生させたジョーナ・ブラックホークはそのクラブのオーナーをつとめており、恩人の頼みということもあってアリソンを受入れはしますが、従業員にも疑いの目を向けるアリソンとは最初から衝突し、根っからの警官嫌いを隠そうともしませんでした。
 1話完結型のシリーズ<NIGHT TALES>第5弾。
 主人公のアリソンの両親はシリーズ1作目のカップルであり、頑固な刑事だった父親もすっかり出世してデスクワークについている模様。
 本書の帯には「これが、J・D・ロブ誕生の瞬間かもしれない」と、著者の別名義シリーズとの作風の類似を匂わせる文句が踊っていますが、あまりそういう雰囲気は感じませんでした。
 連続窃盗団の手口の解明や犯人の特定はごく普通に地道な操作のもとになされますし、強いてJ・D・ロブ名義の作品との類似性を挙げるとすれば、犯人のプロファイリングという要素が少しだけ取り入れられているという程度にとどまります。
 全体としては、ロマンス小説としても非常にゆるい感じで「警官嫌い」を標榜して抵抗するわりにはジョーナもあっさりヒロインに落ちますし、ヒロインのアリソンに当初付き纏っていた別れた恋人のデニスも、さほど存在自体必然性があるとも思えない辺りが少々残念。特に元彼のデニスは相当な駄目っぷりを披露してはいるので、もう少し本筋に関わっていればまた別の面白さもあった気はします。