休みに遊びに行った叔母の家では、姿を見せない従姉妹の紗央里ちゃんは「家出をした」のだと、血塗れで玄関に現れた叔母に言われます。数ヶ月前に祖母が風邪をこじらせて亡くなり、いつの間にか葬儀も済ませたという話を聞かされた主人公の少年は、叔母に対して疑惑を持ちます。そして洗面所で見つけてしまった干乾びた指を見た時に、その家に対する疑惑は益々大きくなりますが…。
第十三回の日本ホラー小説大賞・長編賞受賞作品。
最初は普通に見えた主人公の「僕」の視点からして、読み進めていくうちに異常さを孕んでおり、出てくる人物はことごとく異常な感覚を持っています。そうした部分で本作が、いびつな登場人物を描いたホラーとしての側面を持った作品であることは事実ですが、如何せん人物にしろ情景描写にしろ、表層を書き殴ったという印象が否めません。個人的には、描かれる人物のいびつさがもたらす「気持ち悪さ」よりも、著者の感性への「気持ち悪さ」の方が先に立ってしまった気はします。
不審なひとつの死と、不審な行方不明という、純然たる事実を軸にしつつ、どこか狂った登場人物たちがもたらす気持ちの悪さを描くというコンセプトは面白いのですが、冒頭の異常な幕開けで高い期待感を持たされたこともあり、ディティールの部分での物足りなさが感じられてしまうのが残念でした。