鯨統一郎 『オレンジの季節』

オレンジの季節
 デキる女の怜華にプロポーズをした薫は、彼が専業「主夫」として家に入り、怜華の家の家事一切を取り仕切ることを条件に結婚を承諾してもらいます。ともに仕事を持つ怜華の父母、芽の出ない舞台女優の姉、学生の弟と妹、寝たきりの祖母。彼らのために家のことをする主夫になることを決意した薫ですが、まずは男が仕事もせずに家にいることを渋る怜華の父親が出してきた料理の課題をクリアするところから始めることになります。結果、晴れて結婚にこぎつけた薫は、それぞれに難しいものを抱える家族の中で、専業主夫としての一歩を歩みだすことになりますが…。

 最後の25ページほどがなければ、普通にユーモラスなホームコメディとして、そこそこ面白い作品ではあるものの、今一歩抜きん出た何かに欠けるものであったのは事実でしょう。
 とはいえ、このあまりにもそれまでの流れを断ち切るような結末を用意したことで、読後感はただただ呆然。
 「鯨統一郎だから……」で許されてしまう部分はあるものの、おそらく他の作家が同じことをしたらまず許されない結末であるということは言えるかもしれません。