ナンシー・アサートン 『ディミティおばさま幽霊屋敷に行く 優しい幽霊5』

ディミティおばさま幽霊屋敷に行く 優しい幽霊5 (RHブックス・プラス)

 ディミティおばさまの遺してくれた屋敷で、夫と双子の息子に囲まれて穏やかに暮らしていたロリですが、かつての上司からの電話で、資産家が姪の結婚祝いに与えた屋敷にある膨大な蔵書の鑑定に赴くことになります。ですが、ロリの運転する車は道を外れて事故を起こし、目的の屋敷であるウィアード・ハースト館の近くに住む作家のアダム・チェイスと名乗る男性に助けられます。何とかウィアード・ハースト館に辿り着いたロリですが、そこは近隣では有名な幽霊屋敷であり、屋敷の住人であるニコールとジャレドの夫婦の間にも何故か違和感を覚えます。車の事故も何者かの悪意によるものである可能性が疑われる中、蔵書の中にかつての住人の恋文を見つけたロリは、何かにあやつられるかのように昔の恋人たちの軌跡を探すことになります。

 タイトルから幽霊vs幽霊になるのかと思いきや、今回の内容は主人公のロリを巻き込んだロマンス寄り。前作辺りから微妙に彼女の夫を中心とした家族の存在感が希薄で、本作もまたその流れとなっている感はあります。
 幽霊屋敷での人為的な事件の深層に関しては、やや伏線が弱く、いきなり繋がりがあらわれてくることでトンデモな結末に見えてしまう印象もありますが、結末はキッチリと大団円となっており、読後感は良いものとなっていると言えるでしょう。