荻原規子 『RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女』

RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女 (カドカワ銀のさじシリーズ)

 寮で同室の真響たちと過ごした戸隠からいったん帰省し、その後学園に戻った泉水子は、はっきりとした確信は得られないものの、学園を取り巻く空気が微妙に変わっているような違和感を受けます。戦国時代をテーマとした学園祭の準備が進められる中、泉水子と彼女に憑く姫神を守る山伏である相楽深雪との関係に泉水子は悩みます。そして、学園祭の出し物の都合で急遽「封印」である三つ編みを解く局面に立たされた泉水子に、大きな変化が襲いかかります。

 思春期の少女の成長と、それ故に壁に当たって悩むさまが等身大に描かれる4作目。
 毎作スローペースで進む物語は焦れったさよりも、児童文学をベースに活躍している著者だからこその丁寧で端正な物語が綴られているという印象があり、大きく展開した本作でもそれは一層感じられるものと言えるでしょう。
 これまで正体不明だった姫神の謎にもだいぶスポットが当てられており、物語は大きな転機を迎え、主人公の泉水子が徐々に自覚を促されざるを得ない局面を迎えます。
 まだ物語の全貌は出ているとはいえず、学園という箱庭の世界で物語はおさまり続けているものの、今後の展開に引きを持たせた終わり方となっており、続きが一層楽しみとなっていると言えるでしょう。