紅玉いづき 『ようこそ、古城ホテルへ3 昼下がりの戦争』

ようこそ、古城ホテルへ(3) 昼下がりの戦争 (つばさ文庫)
 古城ホテル『マルグリット』の、四人の女主人のうちのひとりであるジゼットの祖国ボルドーの軍部から、ある重要な会談の場として『マルグリット』を用いることが打診されます。それは、ボルドーとその支配下にあって独立を主張する小国との間の会談であり、ボルドーからはジゼットの軍人時代の教官がやって来ます。時を同じくして、ジゼットに対して何やら思惑のある美少女もホテルに滞在し、会談は始まる前から波乱の様相を呈します。

 3巻目になって、これまでで一番キャラクターで読ませる要素が強くなった印象。登場人物の数は多いものの、一人一人の個性が魅力的で数の多さからくる煩雑さを感じることはありません。その意味で、人物の魅力で展開するストーリーテリングもすっきりしており、リーダビリティに富んだ一作となっていると言えるでしょう。
 また、『マルグリット』の女主人として、その過去や人物に焦点があてられるのは、本作のジゼットで三人目となりますが、ジゼットだけではなくこれまで以上に他の三人の仲間たちの存在意義が大きい物語であることも指摘できるでしょう。
 過去を背負っている女主人たち四人の中でも最も重い過去を持つリ・ルゥの過去が、満を持して語られるであろう次作への期待も高まる一作です。