遺品から死者の想いを「視る」ことのできる和泉に、何かと厄介なことを持ち込む写真家の国香彩乃がバイトの話を持ちかけます。彼女の知り合いだという便利屋でのアルバイトで、個人の遺品の整理を手伝うことになった和泉ですが、そこで因縁のある相手である、葬儀社の藤波透吾と「死の行進」のシリーズ絵画蒐集で他立する貴士とまで鉢合わせをしてしまいます。故人の子供である兄妹のそれぞれが、互いの知らない所で依頼をしたがための事態は、偶然に和泉と貴士が探している絵の一枚が見つかったことでさらに複雑になります。
前作に引き続き、遺品整理を促す葬儀社の男・藤波透吾の存在感が終始大きな一作。
その半面で本作では、主人公であるはずの和泉の「能力」の必然性はあまりにも薄く、敵役である藤波に他の登場人物が食われてしまっている側面も否定できないでしょう。本作においても、表向きは好青年然と振る舞う藤波は、彼の真意を既に知る読者にとってはより一層えげつなく、作品内に置いて誰よりも大きな存在感を示しています。
本作では大きく物語が動いたというよりは、個々の事情を少しずつ掘り下げるための下準備が出来たという印象。今後の展開が楽しみになる一作であったと言えるでしょう。